2024年05月14日

別れを告げない

ハン・ガン「別れを告げない」
済州島で起こった4月3日の悲劇を私は知らずにいて、それはもちろん私の無知もあるのだけど、長らく政府によって隠蔽されていたからでもあったのだった。ハン・ガンは「なかったこと」にされた歴史を、人々を、その声を、その命を、切実な(実際の)痛みと共に書く。「別れを告げない」とは、「哀悼を終わらせない」という意味だという。哀悼は終わらない。その痛みを丸ごと引き受け、その痛みの記憶を永遠に引き継いでゆく。

「私がいることに気づいて母さんは振り向き、黙って笑いながら私の頬を手のひらで撫でたんだ。続けて、後ろ頭も、肩も、背中も撫でてくれた。重たい、切ない愛が肌を伝って染み込んできたのを覚えてる。骨髄に染み、心臓が縮むような・・・・そのときわかったの。愛がどれほど恐ろしい苦痛かということが。」

2024年05月29日

私の身体を生きる

文藝春秋社から、「私の身体を生きる」発売中です。
私も寄稿させていただいています。
17人の書き手が自らの「身体」と向き合って記す、生きるためのリレーエッセイ、とありますが、本当にその通りだなと感じています。初回の島本理生さんのエッセイが凄まじく、それでこのエッセイ集の向かう場所が決まったように思います。私も、今まで書いていなかったことを書きましたし、改めて皆さんの文章を読み返すと、みなさんの身体から発した声が聞こえます。
たくさんの方に読んでほしいです。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163918488