2014年07月26日

ficciones

藤谷治さんの書店、フィクショネスが閉店しました。
下北沢にある、藤谷さんそのものの本屋さんでした。
藤谷さんと初めてお会いしたのは、たしか2004年、
場所はもちろんフィクショネスでした。
編集の方に連れて行ってもらったのだけど、
「作家」に会うのが初めてで、
ものすごく緊張していた。
でも、お店の奥から現れた藤谷さんは、
ものすごく気さくで、ものすごく面白くて、
ものすごく優しかった。
それから、時々フィクショネスにお邪魔して、
藤谷さんの面白すぎるお話を聞いた。
藤谷さんは、例えばオペラやクラシック、
当時見たことのなかった歌舞伎とか、
私にとっては「敷居が高そう・・・」と思われるジャンルのものも、
すべて、「昨日見た猫がさぁ」みたいな感じで話してくださって、
それはまさに藤谷さんの懐の深さ、
最後には腹を抱えて笑ってしまっている。
根っからのストーリーテラー、
皆に愛される藤谷さんは、
最後にチェロを弾いてくださった。
饒舌な藤谷さんだけど、チェロの根は真摯で素朴で、
それもきっと本当の藤谷さんなのだと思う。
下北沢にフィクショネスはなくなるけれど、
藤谷さんの作品は残る。
それってものすごい希望だ。
とりあえず、「下北沢」を読み返そうと思う。