2021年10月09日

十二月の十日

ジョージ・ソーンダースが、希望を書いてる。
ちょっとそれだけで、自分が今どのような時代にいるのかが分かる。ジョージ・ソーンダースが希望を書かなければいけない時代に。
「十二月の十日」は短編集、もちろんソーンダース流絶望もある。「センブリカ・ガール日記」の明るさとおぞましさたるや。ミニマムで、ユーモアがあって、少し恥ずかしがってるように思える文章、で、読むのをやめられないのもソーンダース。でも、「十二月の十日」、表題作のこの、指先から数センチ先にある小さな、でも確かにある光。

今だってまだ怖い、それでもおれにはわかったんだ。そこには同時にたくさんのーたくさんの良いことのしずく、そうおれには思えたー何滴もの幸せな、良い絆のしずくがきっとこの先にはあって、そしてその絆のしずくはー今までも、これからもーおれが勝手に拒否できるものじゃないんだ。

その光に、目が眩む。