タナハシ ・コーツの初小説、初に全てを注ぎ込むのはきっと作家の常だけど、タナハシ ・コーツが奴隷制を、「過酷」と表現するには生ぬるいその世界から必死で手を伸ばす人々を、そして、自由の世界からまだ囚われている人たちの方へ手を伸ばした人々を書いた、だけで胸が熱くなります。
コルソン・ホワイトヘッドの「地下鉄道」に尊敬を捧げながら、でも、タナハシ ・コーツにしか書けない神話的な地下鉄道、は、全ての小説に課される「本当にこうでなければいけなかったのか」「この物語を書くのに最も適した人間は著者だったのか」を、鮮やかにクリアしていて、やはり、胸が熱くなります。
”そんなとき、僕はただ自分に言い聞かせた。これこそが自分の真実にならなければいけない。僕は自由だ、ということが。”