「ねむりたりない」櫻井朋子
手を伸ばしても、あと少しだけ届かない
輪郭は見えても、本当の部分は見えない
言葉にしても、全てを言い切ることが出来ない
溢れた思いを全て集めても、足りない
あらゆる場所の、時間の、誰かの、何かの、「あと少し」にまつわる言葉たちが、やはりほとんど透明な存在としてそこにある いる ほとんど透明だからと言って見過ごされ、捨てられ、なきものにされてきたものたち、に、こうして言葉を捧げることはまったく美しい徒労であり、命を与えることである
夜の蜘蛛は殺してよいと言う人は果たして誰に許されたのか