『暗闇に戯れて 白さと文学的想像力』は、1990年、「ハーヴァード大学で行われた3回のウィリアム・E・マッシー・シニア講義で生じた疑問の探求の結果であり、なおかつ私のアメリカ文学に関する授業の土台でもある」とトニ・モリスンが「はじめに」で語っている。
スルスルと読む、というような行為を、モリスンの知性は私に許してくれなかった。何度も振り返り、咀嚼し、調べ、噛み締めるようにして読むことでやっと、本当にやっと、少しだけ彼女の言わんとすることに近づく、そのような時間だった。
都甲幸治さんの解説が、その時間の大きな手助けをしてくれた。もちろんその時間は尊く、私の身体には、いつもモリスン作品を読んだら手渡される何か強いものが残った。
「書くことと読むことは、書き手にとってそこまで別々のものではありません。どちらにおいても、説明のつかない美しさや、作家の想像力にある複雑さや単純な優美さ、そしてその想像力が生み出す世界に敏感で、心の準備ができている必要があります。(中略)書くことと読むことはどちらも、危険と安全に関する書き手の考えや、意味と責任に関する穏やかな達成、あるいはそれらを求める汗だくの戦いに気づくことを意味します。」