2022年01月25日

優しい暴力の時代

チョン・イヒョンの「優しい暴力の時代」は、静かだ。
どの短編も、静かに、こちらに語りかける。
それは、過去のカプセルの中に閉じ込めた人生の欠片を、語り手が思い出しているからだろう。
思い出す行為は、いつだって静かだから。
手を伸ばしても、もう届かない過去のあちこちに喪失があり、痛みがあり、それは優しい暴力となって語り手を襲う。
それでも私たちは、思い出すことをやめられない。
痛みを伴う行為としての「思い出す」ことは、同時に、私たちを前に進ませることでもある。

私はときどき考えてみたものだ、年収の半分近い学費を払って私を東京のインターナショナルスクールに入れたとき、両親は娘がどんなふうに生きることを望んだのだろうと。韓国人でも日本人でもない、いわばコスモポリタンみたいな人になってほしいと強く願ったのかもしれない。それはともかく、私がそこで最初に覚えた言葉は「ブタ」だった。豚という意味のの日本語。どこの国でもインターナショナルスクールの子どもたちは、悪口は現地語で言う。私がいちばんいっぱい聞いた言葉も「ブタ」だった。

2022年02月04日

CINOH

大好きなブランド、CINOHが全アイテム、黒のコレクションを始動しました。
そして、CINOHにとっては初となるフォーマルウェアをローンチしました。
スーパー光栄なことに、モデルを務めさせていただきました。
フォーマルウェアってからきし縁がなかったのですが、カッティングや肌のあたりがやっぱり絶妙に好みで、普段も着たくなりました。
https://cinoh.jp
写真は、バンクーバー在住の写真家、山崎智世さんに撮影してもらいました。
彼女の開かれた心のおかげで、私もすごくリラックスした顔をしています。
他のモデルの皆さんも、とても素敵。

山崎智世さんのホームページです。
https://moyo-y.tumblr.com/
バンクーバー在住の方、大切な写真を残したいときは、ぜひ彼女にお願いしてみてください。

2022年02月12日

私のいない部屋

レベッカ・ソルニットの自伝は、静謐で冷静で、でも情熱に満ちている。
その情熱はいつか強さになる。
書くこと、そして書くことによって世界を変えることに情熱を注ぐ彼女は、その思い(願いでもある)によって強い。
この強さはきっと、皆が獲得できるはずの強さだ。
そのために傷つき、苦しむことを恐れない人にだけ与えられる強さ。

「よくこうした営みの原動力は怒りだと思われている。しかし多くの運動に力を与えているのは愛だ。私はアクティビストの中で生きるうちにそう確信するようになった。また私的な社会で差し出されるトラウマへの処方箋はたいてい個人的なものだが、一方、誰かのために、あるいは自分を傷つけた状況を変えるために誰かと一緒に行動するときには、トラウマの中心にある孤立感や無力感を乗り越えるような連帯や力を経験することも多い。」



2022年02月18日

虎子食堂と、大好きなあの人

ポプラ社の季刊誌「asta」の「私の名店」に、虎子食堂について書かせていただきました。
虎子食堂は、最高に素敵な友人やっさんが経営する、最高に素敵なお店です。
https://www.toranoko-shokudo.com
なんか、人生でこれだけ大好きな人と(その人が経営するお店!)に出会えるのって幸せやなって思う。
皆さんも是非行ってみてください!!!!!
https://www.webasta.jp

2022年03月08日

緑の天幕

ちょうどリュドミラ・ウリツカヤの「緑の天幕」を読み終わったのだった。
たくさんの、本当にたくさんの人間の血が流れた土地だ。
その土地で、自由と文化のために生きた人間の軌跡は、無数に交差し、時に孤高で、細く、儚く、深く、濃厚である。
政治は、その軌跡をズタズタにする。
個人の、美しい瞬間や、大切な人との思い出や、忘れ難い景色を、なかったことにしようとする。
彼らがどれだけ「ここにいる。私たちはここにいる」そう訴えても、その声すらかき消す。ただただこわす。
人間がなしうる罪の中でも、最も重いと思う。
ロシアのウクライナへの侵攻に、強く反対します。

「この世には奇妙な法則があるー自分に罪悪感を覚えるのは、常に最も罪のない者たちなのである……。」